資金繰り

全東信の破産から経営者が学ぶべきこと|会社を守るための5つの教訓

2026年7月、大阪市の決済代行会社「株式会社全東信」が大阪地方裁判所から破産手続開始決定を受けました。

報道によると負債総額は約1,151億円。2026年に入ってから最大規模の倒産となりました。

全東信は、飲食店などのクレジットカード売上について、カード会社から実際に入金されるより前に加盟店へ資金を支払う「早期決済サービス」を展開していました。

加盟店は一時20万店を超え、2020年3月期には約82億円の売上高を計上していたとされています。

ところが、その裏側では深刻な問題が進行していました。

東京商工リサーチの報道によると、預金残高約170億円の水増し、架空債権約154億円、営業権約88億円の過大計上などが行われていたとされます。

さらに、加盟店に対する未払立替精算金約217億円も計上されていなかったと報じられています。

帳簿上は約25億円の純資産がある会社でしたが、これらを修正すると、実態は約605億円もの債務超過だった可能性があるとされています。

この事件から、経営者は何を学ぶべきでしょうか。

1.「利益」と「現金」はまったく違う

経営者にまず理解してほしいのは、

会社は赤字だから倒産するのではなく、現金がなくなったときに倒産する

ということです。

売上が増えている。
利益も出ている。
決算書の純資産もプラス。

それでも資金が尽きれば会社は倒産します。

特に注意したいのが、売上が増えるほど先に資金が必要になるビジネスです。

仕入代金、人件費、外注費、立替金などを先に支払い、売上代金が後から入ってくる会社では、「成長しているのにお金がない」という現象が起こります。

経営者が毎月確認すべきなのは損益計算書だけではありません。

「あと何か月、会社は現金だけで生きられるのか」

ここまで把握して初めて、本当の意味で会社の数字を見ていると言えます。

2.悪い数字ほど早く出す

全東信の問題で特に重いのが、長期間にわたって粉飾決算が行われていたと報じられている点です。

経営が苦しくなると、

「今期だけ何とか乗り切りたい」

「銀行にこの数字は見せられない」

「来期には業績が回復する」

という誘惑が生まれます。

しかし、数字を良く見せても会社そのものが良くなるわけではありません。

むしろ経営判断が遅れます。

本来なら100の傷で治療できた会社が、数字を隠しているうちに500、1,000と傷口を広げてしまう。

悪い決算書は会社を潰しません。悪い現実を認めないことが会社を潰します。

赤字、債務超過、資金不足が見えてきたら、銀行や税理士などの専門家に早い段階で相談することが重要です。

3.借りられる金額と、借りていい金額は違う

全東信の金融債権者は63社、貸付総額は約1,130億円だったと報じられています。

ここで経営者が考えるべきなのは、

「銀行が貸してくれるから大丈夫」という考え方の危険性です。

金融機関から融資を受けられることは、もちろん企業にとって重要です。

しかし、

「借りられるか」

「返せるか」

は別問題です。

低金利の時代には借入金が大きくても資金繰りが回ることがあります。しかし金利が上昇したり、売上が減少したり、金融機関の融資姿勢が変わったりすると、一気に経営を圧迫します。

借入をするときには、

「いくら借りられるか」

ではなく、

「利益とキャッシュフローから考えて、この借入金を返済できるのか」

という視点が必要です。

4.取引先の倒産は、自社の倒産につながる

今回の事件には、もう一つ重要な教訓があります。

全東信を利用していた加盟店側の問題です。

破産手続開始前に発生していたクレジットカード売上のうち、全東信からまだ支払われていない金額については、原則として破産債権として扱われることが破産管財人から案内されています。

つまり、

「お客様からは代金をもらっているのに、自社にはお金が入ってこない」

という事態が発生します。

これは決済会社に限りません。

大口得意先、仕入先、金融機関、プラットフォーム、決済代行会社など、特定の企業に依存している場合、その会社のトラブルが自社の資金繰りを直撃します。

経営者は定期的に、

「この会社が明日なくなったら、自社はどうなるか?」

と考えてみるべきです。

売上先、仕入先、金融機関、決済手段。

できる範囲で分散させることが、会社を守る保険になります。

5.経営者に必要なのは「最悪を想定する力」

経営では売上を伸ばすことが注目されがちです。

もちろん成長は大切です。

しかし会社を10年、30年、50年と続けていくためには、「どう成長するか」と同じくらい、

「どうすれば会社が死なないか」

を考える必要があります。

主要取引先が倒産したら?
銀行が融資を止めたら?
売上が30%落ちたら?
金利が上がったら?
経営者が突然働けなくなったら?

こうした問いは縁起の悪い話ではありません。

会社を守るための経営そのものです。

まとめ

全東信の破産を「粉飾決算をしていた特殊な会社の話」で終わらせてはいけません。

程度の差こそあれ、

「悪い数字を見たくない」
「銀行から借りられるうちは大丈夫」
「来年になれば何とかなる」
「長年取引している会社だから安心」

という心理は、どの経営者にも起こり得ます。

だからこそ、毎月の試算表だけではなく、資金繰り表を確認する。

取引先や金融機関を分散する。

そして悪い兆候が出たときほど、数字を正確に把握し、早く相談する。

経営とは、未来を当てることではありません。

予想外のことが起きても、会社が生き残れる状態をつくっておくことです。

全東信の破産は、その重要性を改めて私たち経営者に突きつけた事例ではないでしょうか。

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