税務
飲食料品の消費税率が1%に?2027年4月からの引き下げと事業者が今から準備すべきこと
2026年8月、政府は「飲食料品の消費税率を2027年4月から2年間、8%から1%へ引き下げる」との基本方針を閣議決定し、これを受けて9月には正式な令和9年度税制改正大綱がまとめられました。消費税が導入された1989年以来、初めてとなる税率の引き下げです。相次ぐ物価高への対応策として大きな注目を集めていますが、事業者の皆さまにとっては、価格表示やレジシステム、経理処理など実務面での対応が必要になる重要な制度変更でもあります。今回は、現時点で公表されている情報をもとに、制度の概要と事業者が準備しておきたいポイントを整理してご紹介します。
なお、今回の引き下げはあくまで「税制改正大綱」として閣議決定された段階であり、今後開かれる通常国会での税制改正法案の審議・可決を経て、正式に制度化される流れとなります。大綱の内容から実際の法律の条文へと落とし込まれる過程で、対象範囲や経過措置の細部が変更される可能性もありますので、今後の続報にも注意が必要です。
制度の概要:いつから、どのくらいの期間か
今回の引き下げは、2027年(令和9年)4月1日から2029年(令和11年)3月31日までの2年間に限定した時限措置として設計されています。恒久的な減税ではなく、あくまで物価高騰への対応としての期間限定の措置という位置づけです。
税率の内訳は、国税分が0.78%、地方消費税分が0.22%で、合計1%となる見込みです。軽減税率制度そのものが廃止されるわけではなく、現在8%が適用されている飲食料品の税率だけが1%に置き換わるイメージとなります。
対象となる品目・ならない品目
対象となるのは、現行の軽減税率(8%)が適用されている飲食料品です。スーパーやコンビニでの食品の購入、テイクアウトや宅配、ミネラルウォーターなどの飲料もこれに含まれます。
一方で、次のものは対象外とされ、引き続き10%または8%のままとなる見込みです。
- 外食(飲食店での店内飲食・ケータリングなど):10%のまま
- 酒類(ビール、日本酒、ワインなど):10%のまま
- 新聞の定期購読料:8%のまま
特に飲食店を経営されている場合、「店内飲食は10%、テイクアウトは1%」となり、現在2ポイントである税率差が9ポイントまで拡大します。同じメニューでも提供方法によって税込価格に大きな差が生じるため、価格設計や会計処理への影響をあらかじめ確認しておくことが大切です。
財源と低所得者向け給付
引き下げの財源については、「特例公債(赤字国債)に頼らず、補助金や租税特別措置の適正化、税外収入などで確保する」方針が示されていますが、具体的な財源の内訳は令和9年度予算編成の中で決定される見通しです。
あわせて、中低所得の就業者を対象とした現金給付制度(就業者負担軽減支援金)も2027年4月から導入される予定です。1%への引き下げによる負担軽減効果が相対的に小さくなる低所得層に対し、所得水準や扶養家族の人数に応じた金額を先行的に給付する仕組みとされています。
事業者が今から準備しておきたいこと
制度の詳細はまだ確定していない部分もありますが、現時点で分かっている情報をもとに、準備しておきたい実務対応を整理します。
1. レジ・POSシステムの改修
税率が8%から1%に切り替わるタイミングで、レジや会計システムの税率設定変更が必要になります。制度の詳細が公表されてから対応するとしても、最大5~6か月程度は要すると見込まれており、早めの情報収集と業者への相談が安心です。中小企業向けにレジ改修やスマートレジへの移行を支援する助成策も検討されているため、今後の情報にも注意しておきましょう。
2. 価格表示(総額表示)への対応
値札の貼り替えやシステム変更が間に合わない事業者への配慮として、施行前後の一定期間(2027年2月~3月、4月~5月それぞれ最大2か月程度)は、新旧いずれの税率に基づく総額表示も認められる経過措置が設けられる見込みです。ただし、あくまで一時的な措置ですので、切り替えのスケジュールは計画的に立てておく必要があります。
3. 簡易課税を選択している事業者の方へ
簡易課税制度を適用している場合、飲食料品の売上にかかる消費税額と同額を仕入控除税額とみなす特例が設けられる方向で検討されています。この特例が適用されれば、対象部分については実質的な納税額が生じない計算となる見込みです。
4. 本則課税(原則課税)の事業者の方へ
原則課税で申告している事業者、特に店内飲食が中心の飲食店などでは注意が必要です。仕入れる食材は1%課税である一方、店内飲食による売上は10%課税となるため、仕入税額控除が小さくなり、結果として納付税額が増加する可能性があります。ご自身の事業への影響を試算しておくことをおすすめします。
5. 帳簿・経理処理の複雑化への備え
個人事業主の場合、2027年の課税期間(1月~12月)は、1月~3月が8%、4月~12月が1%、外食や酒類は10%と、一年の中で複数の税率が混在します。ご利用の会計ソフトが1%の税率設定に対応しているかを確認し、日々の記帳の際に適用税率を正しく区分できる体制を整えておくことが重要です。
よくあるご質問
Q. うちの店は食品小売業ですが、すべての商品が1%になりますか?
現行の軽減税率8%が適用されている商品であれば、基本的に1%に置き換わる見込みです。ただし酒類や新聞の定期購読料など、もともと軽減税率の対象外だった品目は今回も対象外ですので、取扱商品ごとに現在の税率区分を今一度確認しておくと安心です。
Q. 飲食店ですが、テイクアウトと店内飲食を両方扱っています。何に気をつければよいですか?
店内飲食は10%、テイクアウトは1%と税率差が大きく開くため、レジでの税率区分の誤りがこれまで以上に売上・納税額に影響しやすくなります。会計・POSシステムが正しく区分できているか、施行前に必ずテストしておくことをおすすめします。また、テイクアウト比率が高い店舗ほど、店頭での価格表示の見直しも早めに検討する価値があります。
Q. 簡易課税と原則課税、どちらが有利になりますか?
事業の内容や仕入・売上の構成によって異なりますので、一概にはお答えできません。特に店内飲食中心の原則課税事業者は、仕入税額控除が小さくなることで納税額が増える可能性があるため、事前の試算が重要です。ご自身の事業がどちらの方式に近いか気になる方は、当事務所までお気軽にご相談ください。
まとめ
飲食料品の消費税率1%への引き下げは、家計の負担軽減という側面がある一方、事業者にとってはレジシステムの改修、価格表示の見直し、経理処理の複雑化など、対応すべき課題も少なくありません。特に飲食店や食品小売業を営まれている方は、税率差の拡大による価格設計への影響も大きく、早めの準備が欠かせません。
制度の詳細は今後の法案審議や政省令の公布によって確定していく見込みです。当事務所でも最新情報を随時キャッチアップし、皆さまの事業に即した対応をご案内してまいります。ご自身の事業への影響について詳しく知りたい方、レジシステムや経理体制の見直しをご検討の方は、お気軽に西盛税理士事務所までご相談ください。
【本記事の内容は、掲載時点における法令・制度等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。個別の状況に応じた判断が必要となるため、本記事の内容に基づいて行った行為により生じた損害等について、当事務所は一切の責任を負いかねます。また、法改正等により内容が変更される場合がありますのでご留意ください。】