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資金繰り

売上が増えても、お金が残らない会社の共通点――成長投資と資金繰りを両立させるには

「仕事は増えている。それなのに、通帳を見ると安心できない」

「会社を成長させるために投資しているのに、毎月の支払いが苦しい」

事業を広げようとする経営者にとって、こうした悩みは切実です。人を採用する。営業活動を強化する。設備を導入する。事務所や店舗を広くする。どれも会社の将来につながる行動ですが、支払いは先に発生し、成果が出るまでには時間がかかります。

特に先代から事業を受け継いだ2代目社長は、既存事業を守りながら、新しい取り組みも進めなければなりません。「変えたい」という思いが強いほど、複数の投資を同時に進めてしまうこともあります。

そこで大切になるのが、売上、利益、現金をそれぞれ分けて考えることです。今回は、会社の挑戦を続けるために、成長投資と資金繰りをどう両立させるかを考えます。

1.売上の増加と、預金の増加は同じではない

商品を納品し、売上を計上しても、その日に代金が振り込まれるとは限りません。一方、仕入代金や給与、外注費などの支払いは、入金を待ってくれません。

例えば、追加で300万円の受注があり、その仕事の仕入れと外注費200万円を先に支払い、売上代金は2か月後に入るとします。ほかの経費を考慮する前の粗利益は100万円でも、代金を回収するまでは200万円の資金を用意する必要があります。

これは説明のための仮定ですが、受注が増えるほど先行支出も膨らむ構造を示しています。

「売上を増やせば資金繰りも改善する」と考える前に、いつ、いくら支払い、いつ回収するのかを確認しましょう。値引きして受注を増やした場合は、資金を先に出したうえに、最終的に残る利益まで少なくなるおそれがあります。

売上目標には、粗利益の目標と回収条件もセットで持たせる。この視点が、無理のない成長につながります。

2.成長投資が、毎月の固定費を押し上げている

新しい取り組みの費用には、一度払えば終わるものと、その後も毎月続くものがあります。

事務所の拡張に伴う家賃増加、人の採用に伴う給与や会社負担の社会保険料、システムの月額利用料などは、売上が想定どおりに増えなくても発生します。

例えば、毎月の固定費が30万円増え、追加売上の限界利益率が40%なら、その固定費増加を埋めるには月75万円の追加売上が必要です。

30万円 ÷ 40% = 75万円

限界利益率とは、売上から仕入れなど売上に応じて増える費用を差し引いた割合です。実際の計算では、自社の費用構造に合わせて確認します。

投資を決めるときは、初期費用だけでなく、「年間でいくら支払いが増えるか」「その負担を何の利益で賄うか」まで考えることが大切です。

以前から使っているサービスと新しいサービスが重複していないか。採用後の仕事量は確保できるか。広くしたスペースを売上につなげる計画があるか。契約前に確認することで、投資後の負担を見通せます。

3.「将来のため」が、成果を確認しない理由になっている

広告、セミナー、交流会、社員研修などは、その場ですぐに売上になるとは限りません。信頼づくりや人材育成には時間が必要です。しかし、時間がかかることと、成果を確認しなくてよいことは別です。

営業活動なら、参加人数や名刺交換の枚数だけでなく、その後の面談、見積もり、契約、粗利益まで追いかけます。

研修なら、受講後に仕事の時間が短くなったか、ミスが減ったか、任せられる業務が増えたかを確認します。

例えば「3か月後に相談件数を確認する」「半年後に契約と粗利益を確認する」と、取り組みに合った見直し時期を先に決めておきます。成果が出なければ、対象となる顧客、案内の内容、開催方法などを変える判断ができます。

すべてを短期の売上だけで評価する必要はありません。ただし、何を目指す支出なのか、どの変化が起きれば続けるのかを言葉にしておくことは必要です。

「将来につながるはず」という期待を、確認できる計画に変えていきましょう。

4.投資する前に、3つの数字を決める

成長投資を続けるために、まず決めておきたいのは、次の3つです。

  • 投資の上限額
  • 見直し時期
  • 守りたい預金残高

上限額には、初期費用に加えて、成果が出るまでの継続支出も含めます。見直し時期を決めれば、予定より遅れている取り組みに早く気づけます。預金残高の下限を決めれば、追加投資の判断に会社としての基準ができます。

必要な現金は、業種、入金周期、固定費、借入返済、季節変動によって異なります。単純に「月商の何か月分あれば大丈夫」と決めつけず、売上が減る、入金が遅れるといった場合にも支払いを続けられるかを確認しましょう。

特に納税、賞与、設備の支払いが重なる月には注意が必要です。今月の通帳残高が十分でも、数か月後には大きく減る場合があります。

利益が出ているかを見る試算表と、これからの入出金を見る資金繰り表を組み合わせることで、判断に必要な数字がそろいます。

5.今週できる、資金繰りの点検

まずは、今後3〜6か月の入出金予定を並べてみましょう。

売上予定をそのまま入金欄に書くのではなく、実際の回収予定日で記載することがポイントです。給与、家賃、仕入代金、税金、借入返済なども、支払時期に合わせて記入します。

月末残高だけでは見えない不足もあります。月末に大きな入金があっても、その前の給与支払日に資金が足りなくなる可能性があるため、余裕が少ない時期は週単位でも確認します。

次に、毎月の支出を見直します。

すぐに売上や業務を支えるもの、将来の成果を目指すもの、利用が少なくなったものについて、目的と実績を点検しましょう。停止や変更をするときは、解約条件や業務への影響も確認します。

さらに、売掛金の回収状況を点検します。

請求漏れがないか、支払期日を過ぎていないか、新しい取引の回収条件が長くなっていないか。取引先と合意できる場合には、着手金や分割請求などを検討する余地もあります。

資金が不足する見込みなら、必要額、必要時期、その原因、返済原資を整理して、早めに金融機関へ相談します。借入れを行う場合も、売上の回復が遅れたときに返済を続けられるかまで考えることが大切です。

6.2代目社長の挑戦を、会社の力に変える

会社を変えるには、投資が必要な場面があります。目の前の資金繰りが苦しいからといって、将来の売上につながる取り組みまで一律に止めると、成長の機会を失うこともあります。

だからこそ、取り組みに順番をつけましょう。

既存顧客への提案、採算の改善、回収の見直しなど、比較的早く資金に結びつく行動と、人材育成や新規事業など時間を要する投資を組み合わせます。

社長の思いを、投資額、期間、期待する成果に置き換えて社員と共有することも有効です。数字があれば、周囲も状況を理解し、改善策を考えやすくなります。

会社にお金を残すことは、次の挑戦を選べる余地をつくることです。

売上だけを追わず、利益と現金の動きを確かめながら、会社が続けられる速度で成長を進めていきましょう。

西盛税理士事務所では、税務申告に加えて、経営者の皆さまと利益、資金繰り、これからの投資について考えています。

「投資を続けたいけれど、どこまで使ってよいか分からない」

「売上はあるのに資金に余裕がない」

そう感じたら、まずは現在の数字と今後の予定を一緒に整理してみませんか。

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